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ホーム >> 【個人のお客様への調査内容】 紛争事例
※「千葉県宅地建物取引業協会 研修会テキスト」 から抜粋したものです。
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地中埋設物の説明なく売買契約が行われた |
売却した土地の地中に大量の産業廃棄物等が存在したため、主業者が瑕疵担保責任を問われたケース
紛争内容
- 売主業者Aは、旧売主Bから宅地(工場跡地)および建物(プレハブ)を売買代金7億円余で購入し、買主Cに転売した。
- ところが、当該地の地中にはプラスチック等の産業廃棄物が大量に埋められていたほか、地下1m位のところに一面に旧建物の土間コンクリートが埋められており、さらに、その下に建物基礎が存在していた。
- 買主Cは、これらを除去しなければ新しい建物の建築のための基礎工事ができないため、売主業者Aに対して、これら埋設物の撤去工事費用895万円の支払いを請求をした。
- そこで、売主業者Aは旧売主Bに対して瑕疵担保責任にもとづき(3)と同額の損害賠償の請求をした。
【売主業者Aの言い分】
この売買は、建物の敷地として使用する目的でなされたものであり、これらの地下埋設物を除去しなければ当該地に建物を建築するための基礎工事ができないのであったから当該地には瑕疵がある。
購入当時、土間コンクリートはむきだしの状態ではなく、土が覆っていたし、かなりの部分は雑草が生えていたので、この土地の瑕疵は、通常容易に発見することができず、隠れた瑕疵にあたる。
転売先の買主Cから撤去工事費用の支払請求を受けているが、未払いであっても損害と言える。
【旧売主Bの言い分】
売主業者Aは、転売目的で当該地を私から購入したのであり、更地売買においては、地中の埋設物は日常頻繁にみられ、無視されて売買するのが実情である。
仮に、これが判明してもAが売買を断念することなく、代金減額事由にならなかったと考えられ、Aと私の間においてこれを瑕疵とみない特段の事情があった。
当該地の地中に土間コンクリートが存在するであろうことは、Aが容易に認識し得る状態であり、また、建物の基礎が存在するであろうことも合理的に推測し得た。Aが転売先から撤去工事費の支払請求を受けているとしても、現実に支払ったわけではないのだから損害を被ったとはいえない。
【買主Cの言い分】
当該地の地中には、プラスチック等の産業廃棄物が埋められており、これらを除去しなければ建物を建築する基礎工事ができない状態である。
したがって、埋設物撤去工事費用として895万円の支払を売主業者Aに請求する。
【本事案の問題点】
- 土間コンクリート・基礎の存在につき売主業者Aに悪意または過失があるか否か。
- 売主業者Aおよび旧売主B間での売買契約において、地下埋設物の存在が隠れた瑕疵に当るか否か。
- 商人間の売買の場合における目的物の検査・瑕疵通知義務が本事案で認められ、旧売主Bは免責されるか。
【本事案の結末】
- 宅地の売買において、その土地上に建物を建築するについて支障となる質・量の異物が地中に存在するために、その土地の外観から通常予測され得る地盤の整備改良の程度を超える特別の異物除去工事等を必要とする場合は、宅地として通常有すべき性状を備えないものとして土地の瑕疵にあたると解すべきである。
本事案における産業廃棄物、土間コンクリートおよび建物基礎の存在は、その状況およびこれらを除去するために、相当の費用のかかる特別の工事を要するので、土地の瑕疵にあたる。
産業廃棄物、土間コンクリート等は土や草に覆われていたから、通常容易に発見できなかった。
したがって、土間コンクリートや基礎の存在につき、売主業者Aに悪意・過失があるという旧売主Bの主張を排斥し、隠れたる瑕疵に当るとした。
- しかし、売主業者Aと旧売主Bはいずれも建設業等を目的とする株式会社であり商人である。
商人間取引(※)では、隠れた瑕疵に当る場合でも、商法第526条により、Aは、目的物を受領してから6月以内に検査して、瑕疵があれば直ちに相手に通知しなければ瑕疵担保責任は請求できない。本事案では、Aは、Bに対こしてその通知を怠り期間は経過しているけれども、Bはその瑕疵の一部について悪意があったので、その部分については損害賠償責任が認められた。
- 買主Cが売主業者Aに請求している瑕疵を修補するための費用は、Aが現実にこれを支出したか否かにかかわらず、旧売主Bに対し、瑕疵担保責任にもとづく損害賠償として請求できる。
(※)商人問売買では、商法第526条により買主は目的物を受領したときに遅滞なく瑕疵の有無を検査し、もし、瑕疵があったときは直ち売主に通知すべきであり、仮に瑕疵が発見できないときでも、受領後6月以内に発見し直ちに通知を発しなければ瑕疵担保責任を追及できない。
もっとも、同条第2項により売主が悪意のときは、この規定の適用はない。
本事案に学ぶ
- 工場跡地等については、地中埋設物がないか注意する
売主が負う瑕疵担保責任は、買主はその瑕疵の存在について知っていたか、もしくは、通常の注意をもって知り得た場合には、その責任を免れる。
本事実においても、地下埋設物の存在について知り得たか否かの過失の有無が争点の一つになっていた。
したがって、売買契約における瑕疵担保責任をめぐる紛争を未然に防止するためには、次の点に留意する。
●当該地のように工場跡地の場合は、地中埋設物がないか、現況についてよく注意する。場合によっては、前所有者から従前の利用方法等を聞き取り調査をする。
●売主の立場からすれば、契約の締結にあたり、必ず買主を現地に案内し物件を見せて十分に説明する。
- 媒介業者は売主が業者といえどもその説明を鵜呑みにして成約しない
本事案は、旧売主Bと売主業者Aとの裁判であったが、媒介業者も当該地のように工場跡地ということが分かっている物件については、売主の説明を信じただけでこれを成約させた場合、媒介契約上の善管注意義務にもとづく調査義務違反を問われ、損害賠償責任が発生する可能性が高い。
したがって、媒介業者は、売主が業者といえどもその説明を鵜呑みにせず、十分な調査を心がけることが必要である。
- 媒介業者は、関係記録を必ず作成・保存しておく
媒介業者は、物件の十分な調査を行ったうえで、調査を実施したことが証拠として残るように、その関係記録を必ず作成・保存しておくことが、将来のために必要である。
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