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※「千葉県宅地建物取引業協会 研修会テキスト」 から抜粋したものです。
不動産j購入前の事前確認、紛争事例
オーナーチェンジの仲介に際し敷金の承継を説明せずに… その2

最高裁は、「従前の賃貸借の内容のすべてが、新賃貸人に引き継がれるとして賃料の前払いのごときもこれに含まれる」としました(最判昭38.1.18判時330.36)。したがって、賃借人のいる建物を買い受けて賃貸人の地位を承継するときは、賃貸人、賃借人の双方から賃料等の債権・債務の額を確認しておく必要があります。
次に旧所有者時代に発生した解約事由が承継されるか見ていきましょう。
  1. 賃料不払いについては、新所有者は、旧所有者時代の延滞分の債権を譲り受けた場合についてのみ、その延滞を理由に解約権を行使しうると解されています(大判昭14.8.19新聞4456.16、東京高判昭33.11.29判時176.21他)
  2. 借家法の適用のある賃貸借において、旧家主が正当事由を主張して解約の申し入れをし、その申し入れ期間中に家主が交代した場合には、新家主は、旧家主による解約申入状態を原則として承継しないと解されています。(大阪控判昭18.10.29民集22付録35)。正当事由の有無につき、賃貸人側の事情が重要なファクターである場合には、それは新旧家主間において差異(例えば自己使用の必要度)があるからでしょう。
しかし、旧家主が示した正当事由が新家主になったからといって別段変更しないと認められる別段の事情があるときは、旧家主がなした解約申入の効力は新家主にもそのまま継承されるという判例もあります。(大阪地判昭33.6.13下民集9.6.1070)。同様に、正当の事由が家主側とは無関係にもっぱら賃借人側についてのみ認められるような場合(例えば背信行為)にも、解約申入の効力を承継させる余地があると言われています。

(敷金)

判例は、敷金については、敷金が譲受人に現実に引渡されたか否かを問わず、旧賃貸人と借主間の敷金関係は当然に譲受人に承継される――すなわち譲受人が借主に対する返還義務を負う、と解しており(大判昭和5年7月9日民集9巻839頁、大判昭和11年11月27日民集15巻2110頁)、このことは、差し入れられている敷金額の多少、譲受人が敷金の差し入れられていることを知っていたか否か、譲受人が敷金の引渡を受けなかったことについての過失の有無などには関係がないものとされています。
なお、承継される敷金の範囲は、借主の旧賃貸人に対する未払賃料債務があれば当然これに充当され、残額についてのみその権利関係が譲受人に承継されることになります(最判昭和44年7月17日民集23巻8号1610頁)。したがって、新所有者に対して敷金の返還を請求する賃借人は、新所有者が承継すべき敷金の範囲、つまり旧賃貸人に対する債務の有無を立証しなければなりません(大判昭8.12.13新聞3665.15)。なお、具体的に差し入れられた敷金をめぐっての法律関係のほか、一定額の敷金を差し入れるべき特約、一旦差し入れた後にも債務への充当で敷金額が減少すればつねにこれを補填すべき特約も(これは賃貸人側に有利な特約です)、当然新所有者により承継されると解されています(大判昭18.5.17傍論)。
以上のように敷金の返還義務が譲受人に当然承継されることはほとんど確定した判例理論といってよいでしょう。
しかし、敷金関係が承継されるのは、賃貸借契約が存続し、その賃借権が登記又は借地借家法31条1項(旧借家法1条1項)によって対抗力を有することにより、敷金を含む賃貸借関係が新所有者に継承されるからです。したがって、賃貸借の終了後に所有権が移転したような場合には、賃貸借契約自体が新所有者に承継されませんから、「敷金に関する権利義務の関係のみが新所有者に当然に承継されるものではなく、また、旧所有者と新所有者との間の特別の合意によっても、これのみを譲渡することはできない」と解されていますし(最判昭和48年2月2日民集27巻1号80頁。この判例も賃貸借存続中における所有権移転の場合には、敷金関係も承継されることを前提としている)、賃貸借であっても、借地借家法の適用がなく対抗力がないものであれば、敷金返還債務を含め賃貸借関係が新所有者に承継されないことになります(大阪高判昭和53年5月30日判時927号207頁。この事例は、ビル屋上の賃貸借は建物の賃貸借とは言えないとして旧借家法の適用を否定し、敷金関係は新所有者に承継されていないとして、借主から旧所有者に対する敷金返還請求を認めたものです)。

(保証金)

敷金ではなく保証金だったらどうなるのかということが問題になります。
保証金については、具体的事例において、その保証金がどのような性質の金員であるかが、まず問題になります。判決例についてみると、およそ次のように大別できます。
  1. 敷金としての性質を有するとしたもの(東京地判昭和54年5月30日判夕394号91頁、同平成2年11月5日金融商事871号21頁など)
  2. 金銭消費貸借又は一種の無名契約(民法上の典型的な契約でないもの)と解し、賃貸借契約との関連性を認めるもの(大阪高判昭和58年2月25日金融商事675号26頁、東京地判昭和63年10月26日判夕703号166頁、同平成2年5月17日判時1374号63頁など)
  3. 金銭消費貸借と解し、賃貸借契約との関連性を否定するもの(最判昭和51年3月4日民集30巻2号25頁、東京高判昭和58年12月19日判夕523号162頁など
上記の判決例は、必ずしも所有権の移転の場合に保証金返還義務が承継されるか否かを問題にした事例ではないのですが、保証金の性質を敷金と解すれば、前述した敷金の場合と同様に考えればよい(新所有者への承継を認める)ことになりますが、賃貸借契約との関連性がない単なる金銭消費貸借と考えれば、保証金返還義務は新所有者(譲受人)に承継されないということになります。
上記Bの最高裁判例(昭和51年3月4日)は、後者の見解であり、次のように判示して承継を否定する立場を採っています。
「本件保証金は、その権利義務に関する約定が本件賃貸借契約書の中に記載されているとはいえ、いわゆる建設協力金として右賃貸借とは別個に消費貸借の目的とされたものというべきであり、かつ、その返還に関する約定に照らしても、賃借人の賃料債務その他賃貸借上の債務を担保する目的で貸借人から賃貸人に交付され、賃貸借存続と特に密接な関係に立つ敷金ともその本質を異にするものといわなければならない。そして、本件建物の所有権移転に伴って新所有者が本件保証金の返還債務を承継するか否かについては、右保証金の前記のような性格に徴すると、未だ新所有者が当然に保証金返還債務を継承する習慣ないし慣習法があるとは認め難い状況のもとにおいて、新所有者が当然に保証金返還債務を承継するとされることにより不測の損害を被ることのある新所有者の利益保護の必要性と新所有者が当然にはこれを承継しないとされることにより保証金を回収できなくなるおそれを生ずる賃借人の利益保護の必要性とを比較衡量しても、新所有者は、特段の合意をしない限り、当然には保証金返還債務を承継しないものと解するのが相当である」
この最高裁判例に対する学説は賛否両説があり、近時は、この最高裁判例に反し、保証金返還義務の新所有者への承継を肯定した下級審判例も相次いでいます(前掲東京地判平成2年5月17日、東京地判平成2年10月3日金融商事871号18頁、前掲東京地判平成2年11月5日、東京地判平成5年5月13日金融商事924号17頁)。もっとも、保証金の一部についてのみ敷金の性質を有するとして承継を認めましたが、他の部分は最判の見解を引用して承継を否定した事例(東京高判平成6年12月26日判夕883号281頁)、同じく最高裁判例を引用して承継を否定した事例(東京地判平成7年8月24日判夕904号156頁)もみられます。
要するに一般的には保証金という名称で預けられている金銭の法律的な性格によって決まることになります。
通常は、賃料の大体6ヶ月から12ヶ月分ぐらいが敷金と言われていますから、この範疇に入っているものは保証金といっても敷金とほぼ同じだろうと思います。
賃料不払いをこの保証金で補填できるという条項があるものについては、6ヶ月から12ヶ月ぐらいであれば基本的に敷金と考えてよいと思います。しかし、50ヶ月分とか35ヶ月分ぐらい預けているようなもの、これはどちらかというと敷金ではなくて、いわゆる金銭消費貸借と見られるケースが圧倒的に多いと思います。
前述のように保証金という名の敷金である場合は、これは敷金と同じ扱いを受けますので常に引き継がれることになりますが、金銭消費貸借だったらどうなるかというと、これはオーナーのただの借金ですから引き継がれません。賃貸借とは全然別という解釈です。賃貸借が移ろうと移るまいとオーナーに対して返してもらうだけで新所有者は承継しないということです。
それでは、12ヶ月を超えているものは敷金と認められないのかということですが、判例では20ヶ月のものまでは敷金だと認められているものがあります。逆に否定したものでは、50ヶ月は敷金ではないと明確に否定したものがありますので、一応目安として参考にしてください。東京の場合は高額敷金として24ヶ月というものがありましたけれども、今はほとんど姿を消して6ヶ月から大体12ヶ月になっていると思いますので、保証金といってもそれは実質上は敷金というふうに考えて処理をしていただいて良いだろうと思います。

(実務上の留意)

実務的には、賃貸ビルを譲り受けようとする者は、保証金については建物の買主(新所有者)の承継義務について疑問があるとしても、売主(賃貸人)が受領している敷金、保証金の金額を十分に調査し、返還債務を負担することを前提にして、買受価額を定めないとトラブルの原因となります。保証金については、上記最高裁判例の立場からすれば売主(旧賃貸人)がそのまま返還債務を負いますが、賃貸借関係から離脱しビル所有権をも有しない売主に保証金返還債務のみを残存させることは現実的ではありませんから(ビル借主も望まないでしょう)、三者の合意により建物の買主が返還債務を負い、売主はこれを免れることとし(免責的債務引受契約等が考えられるでしょう)、これを前提としてビルの買受価額も定めることが妥当です。

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