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ホーム >> 【個人のお客様への調査内容】 紛争事例
※「千葉県宅地建物取引業協会 研修会テキスト」 から抜粋したものです。
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隣地開発計画の調査を怠った |
媒介業者が当該地の隣地の開発計画について調査を怠り、精神的損害について賠償を命じられたケース
紛争内容
- 宅建者]は、売主Aの長男Bから、A所有土地の売却を仲介して欲しいとの依頼を受けた。
その際、長男Bからは「父親Aは高齢で、売却に関することは全て私が任されているからよろしくお願いしたい。」とのことであった。
- 買主Aは、気管支炎を思ったこともあり、緑の多い空気のきれいな土地に移ることを望み、土地建物の購入について業者Bに媒介を依頼した。
- 買主Aは依頼にあたり、緑に包まれた閑静な場所であることを購入条件の一つとした。
- 買主Aは、当該物件を購入したが、その際、契約前に媒介業者BがAに交付してあった物件紹介書(注・リーフレツトに類するもの)には、「緑に包まれた閑静な住宅地」との記載があり、業者Bも「環境はよく、周辺の緑は当分なくならないだろう」とAに告げた。
- しかし、当該物件に隣接した土地には、当時すでに申請済の開発計画があり、その後、開発が進んだため、閑静な場所でなくなってしまった。
- そこで、買主Aは、媒介業者Bに対し、債務不履行にもとづく損害賠償請求をした。
【買主Aの言い分】
物件の購入依頼を受けた媒介業者Bは、媒介契約上の義務として善管注意義務を負っており、その一つとして「調査義務」がある。
隣接地の開発計画は、大規模なものであったから、当時すでに自然を残すよう求める住民運動が起き、新開・テレビでも報道されていたので、Bが相当の注意をしていれば知り得たものである。
緑に包まれた閑静な土地建物の媒介を依頼された業者としては、媒介物件の隣接地に開発計画があるか否かを調査し、これを説明告知する義務があり、これを怠ったBは、私が被った損害を賠償する義務がある。
【媒介業者Bの言い分】
当該開発計画の存在については知らなかった。
まして、隣接地の開発計画を知りながら、故意にこれを告げず、または、あえてこれを秘したのではない。
当該開発計画では、通常の開発に比べ、かなり多い割合の緑地を残している。
当該開発計画の結果、当該物件の周辺は道路が舗装、水道、ガス、排水施設の整備がなされ、学校や公園の設置も予定されている等、住環境がよくなった面もあるので、損害を賠償する必要はない。
【本事案の問題点】
- 当該開発計画は、当該物件購入時、すでに市民の間でも自然破壊と問題となり、自然を残すよう求める住民運動のことも新開・テレビで報道されていた。
しかしながら、媒介業者Bはこれらの事実を知らなかった。
- 依頼者から購入物件に条件を付けられているにもかかわらず、その観点からの調査を怠った。
【本事案の結末】
当該開発計画は、大規模なものであったから、すでに当該物件の売買契約締結の約3年前から市民の間でも自然破壊の宅地開発として問題となって、自然を残すよう要求する住民運動が起き、新開・テレビでも報道されていた。
本事案では、媒介業者Bは業者として相当の注意をもってすれば、容易に当該開発計画を知ることができ、この計画が実現されれば、周辺は、緑に包まれた閑静な土地でなくなるおそれのあることを知り得たにもかかわらず、その注意を怠ったという過失があった。
したがって、買主Aは、Bの債務不履行により、当該開発計画を知らないまま購入したのであるから、Bは、Aの被った損害を賠償すべき義務があると認められた。
その損害は、当該物件の周辺が従前のような緑に包まれた環境でなくなり、また、一定限度において日照等にも影響を受ける等、住環境の変化によりAの被る精神的苦痛であると認められた。
これにより、Bは、Aに精神的損害について賠償を命じられた。
本事案に学ぶ
- 購入物件に買主から条件が付されている場合は、特に細心の注意を払う
本事案のように、依頼を受けるにあたり、購入物件に買主から条件が付されている場合は、特にその観点から細心の注意をもって調査を十分に行う。
- リーフレット類も重要事項説明書の一部とみなされるため、注意する
物件紹介書はもちろん、リーフレツト類も重要事項説明書の一部とみなされるので、買主に交付する以上はリーフレツト類の記載事項に現状との差異がないかどうか、細心の注意を払い、十分な調査にもとづいて交付すべきである。
- 十分に調査していない事項について確信あるかのような説明はしない
物件の紹介書にはもちろん、案内等の担当者も、十分調査していない事項について、確信あるかのように説明すべきでない。
- 常日頃から情報を収集する
当該開発物件は、すでに市民の間で、問題になっており、媒介業者は、常日頃、新開、雑誌、役所への開発計画の確認等により情報を収集ことが必要と言える。
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