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ホーム >> 【個人のお客様への調査内容】 紛争事例
※「千葉県宅地建物取引業協会 研修会テキスト」 から抜粋したものです。
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手付け倍返しは現実の提供を要する |
「手付倍返しによる売買契約の解除」は、現実の提供を要する
紛争内容
- 売主A、買主B間で売買契約が締結され、BからAに手付金として600万円が交付された。
- 売主Aは、その後気が変わり、買主Bに対し手付の倍額を口頭により提供したうえで、売買契約を解除する意思表示をしたが、Bはこの意思表示を拒絶した。
- 売主Aは、さらに、数回にわたり、手付倍額の口頭の提供と解除の意思表示を繰り返し行った。
- 買主Bは、売主Aのこの解除を認めず、Aに対し当該地の引渡しと所有権移転登記を請求して訴訟となった。
(注)
- 口頭の提供…弁済者が給付する準備だけして、債権者に受領するよう催告することをいう。
- 現実の提供…金銭を債権者宅に持参するとか、債権者の銀行口座に振り込むというように、弁済者が、給付について自分がなすべきことを全部行い、債権者が受領しさえすれば履行が完了する程度のことを実行することをいう。
【買主Bの言い分】
民法第557条第1項により、売主が手付の倍額を償還して契約の解除をするためには、手付の「倍額を償還して」とする同条項の文言からしても、単に、口頭により手付倍額の受領を催告するのみでは足りない。
買主が、同条項によって手付を放棄して契約の解除をする場合とめ均衡からしても、買主に対し手付の倍額を現実に提供することを要する。
【買主Aの言い分】
手付倍額の提供の程度は、相手方の対応等により信義則に則して決められるべきである。本事案では、買主Bは、私の最初の解除の意思表示のときからかたくなに解除の申し入れを拒絶していたのであるから、口頭の提供で足りる。
【本事案の問題点】
売主Aが、手付倍返しにより売買契約を解除しようとする場合、買主Bが手付倍額の受領を拒絶しているときには、口頭の提供をすれば足りるか。
【本事案の結末】
口頭の提供による手付倍返しでの売買契約の解除はできない。民法第557条第1項により、売主が手付の倍額を償還して契約の解除をするためには、手付の「倍額を償還して」とする同条項の文言からしても、また、買主が同条項によって手付を放棄して契約の解除をする場合との均衡からしても、単に、口頭により手付の倍額を償還する旨を告げその受領を催告するのみでは足りず、買主に現実の提供をすることを要するものとして最高裁の判決がおりた。
本事案に学ぶ
手付を受領した者が、手付倍返しにより契約を解除するには、単に契約の解除の意思表示をしただけでは足りず、「手付倍額の償還」をして契約解除の意思表示をしなければならないが、この場合、買主があらかじめその受領を拒んでいるときには、売主は単に口頭の提供をすれば足りるのか、それとも現実の提供が必要なのか。
- 手付倍返しにより契約解除をするときは、現実の提供が必要である
●口頭による意思表示では、有効な解除とは認められない
上記について、判例は、次のように明確にした。
売主が手付倍返しにより契約を解除しようとするときは、単に「手付の倍額を返すから、契約を解除する」と口頭や書面で意思表示しても、また、それを何回繰り返しても、有効な解除とは認められない。
●必ず手付の倍額の現実の提供が必要である
買主が手付解除を拒否しているときでも、必ず手付の倍額の現実の提供が必要である。
売主が、口頭の提供と解除の意思表示を何度もしているうちに買主が「履行の着手」をしてしまえば、売主はもはや倍返しによる解除はできない。
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新判例を踏まえて売主または買主に助言・指導する
●宅建業者が自ら当事者となったときはもちろん、媒介行為をした際には、あとで解除が効力を生じないなどということがないよう新判例(従来、裁判例あるいは学説上争いがあったところである。)を踏まえて助言・指導することが必要である。
●本事案のように買主が、手付の倍返しの受領を拒否した場合は、その対処等について、いずれにしても法律の専門家である弁護士等に相談することが必要である。
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